シャープ戴社長、再建開始から2年を振り返る–見直し重ね単身赴任手当は廃止へ

(シャープの代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は8月31日、社内イントラネットを通じて、社員向けメッセージを配信した。)

2016年8月に、鴻海傘下での再建が始まってちょうど2年を経過した。節目となった今回のメッセージでは、冒頭に戴会長兼社長は、「一昨年8月に新体制が発足し、2年が経過した。まずはこの間、シャープの成長に向け、私と共に懸命に取り組んでくださった皆さんに改めて感謝する。本当にありがとうございます」と述べ、
「人材育成」に課題、「野心・チャレンジ精神」は不十分と指摘
だが、メッセージのタイトルが、「強い決心を持って、困難に立ち向かおう」としたように、社員に対して、厳しい要望や指摘を行う内容となった。

最初に触れたのが、8月中旬に実施した全ビジネスユニット(BU)責任者を対象としたアンケート調査の件だ。

シャープの代表取締役会長兼社長の戴正呉氏

シャープの代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
「この2年間のさまざまな施策の実行や、所属員の意識改革について自己評価してもらうとともに、大きく変化したと実感することや見直すべき施策などについて意見をもらった」とし、「施策の実行」については、「ビジネスモデルの変革」、「ビジネスプロセスの見直し」、「コスト削減」の3つの項目についてはしっかりと取り組めたとした。
一方で、「グローバル事業拡大」は事業や地域によって進捗に差が見られた結果や、多くのBU責任者が、取り組みが不十分であったと自己評価している項目が「人材育成」であったことを紹介。「今回の調査は組織のリーダーを対象としたものにもかかわらず、リーダーの最も重要なミッションとも言える『人材育成』に大きな課題があるという結果に、私は強い危機感を覚えている。人材を育成する上で、集合研修などの研修プログラムによるトレーニングも大切だが、これはあくまでも基本的な知識の習得が中心であり、これだけでは本当に強い人材は育たない」と危機感を持っていることを説明した。

さらに「日々の業務において、リーダーが、部下に意識的に課題を与え、常にその進捗を確認し、必要に応じて軌道修正を指導し、これを何度も繰り返すことが極めて重要である。BU責任者に限らず、すべてのリーダーは、いま一度これを肝に銘じ、日々の業務の中で意図的に人材育成に取り組んでほしい」と続けた。
「所属員の意識改革」に関する調査では、「スピード」、「野心・チャレンジ精神」、「革新性・新しい発想」、「粘り強さ」、「One SHARP」のすべての項目で概ね良い評価となったが、「私の見方は少し違う」と厳しく指摘した。

「確かに、『スピード』や『粘り強さ』では大きな改善が見られるが、とくに、『野心・チャレンジ精神』については、まだまだ不十分である。現在、当社が置かれている事業環境は、中期経営計画策定時の想定から変化している項目も数多くあり、社員全員がさらに意識を高め、次々と新たな挑戦をし続けなければ、計画達成は困難である。各部門長の強力なリーダーシップの下、さらなる野心を持って、仕事に取り組んでいただきたい」と要望した。
「多くのBU責任者が、高い意識を持った社員の裾野を広げ、組織の総合力を向上させることを、今後の課題にあげていく。各部門長は、いま一度自部門の状況を確認するとともに、これまで以上に隅々まで目を配った組織運営を心掛けてほしい」とした。

社員が1つの事業に深く携わることが本当に強い会社を作る
また、アンケート調査では、各BU責任者からの意見の中に、グローバル人材の育成や確保を狙いとした海外駐在制度の復活に関する意見が数多くあったことに触れ、「しかしながら、海外駐在では、本社や事業本部との距離が離れることによって、各拠点が全社の方針からずれた動きとなる懸念がある。駐在を置かないことにより、多くの社員に海外出張の機会を与えることができ、各拠点における日常業務をナショナルスタッフに任せることで、ナショナルスタッフの育成、ひいては経営の現地化にもつなげることができる。こうした理由から、現在の年間180日を上限とした出張ベースでの海外派遣が、グローバル人材の育成においても有効だと考えている」と回答した。
幅広い事業や職種の経験を積んだ人材を育てることを狙いとした社内ローテーション制度の導入を希望する声に対しては、「本当に強い会社を作るためには、事業に精通した人材を数多く育成することが重要であり、私は社員の皆さんに、さまざまな事業を転々とするのではなく、1つの事業に深く携わっていただきたいと考えている」と、戴会長兼社長自らの意見を述べた。
そして、「もちろん、幅広い経験を積み、視野を広げることは重要である。現在のシャープには、“One SHARP”の方針のもと、他本部と業務で連携する機会や、勉強会などで他本部の情報を得る機会が数多くある。こうした機会を積極的に活用し、自らの成長につなげていただきたい」とした。

一方で、8月31日から、独ベルリンで開催されている「IFA 2018」に、2017年に続き出展したことや、開幕に先立って、記者会見を開催し、取締役副社長の石田佳久氏から欧州事業の本格展開について説明したこと、「AQUOS 8K」が、欧州の家電業界団体であるEISA(欧州映像・音響協会)が選定する「EISA AWARD MONITOR INNOVATION 2018-2019」を受賞したことに触れ、欧州における本格的な事業拡大を進める姿勢を強調した。
「欧州では2017年、“SHARP IS BACK”を宣言し、AQUOS 8Kを筆頭としたテレビ事業の再構築やスマートフォン市場への参入を進めるなど、事業拡大に向けた一歩を踏み出した。今2018年は、IFA 2018を皮切りに、より本格的な事業拡大フェーズへと突入していく。具体的には、AQUOS 8Kのラインアップを拡大するとともに、サウンドバーの新展開をはじめとした周辺機器の強化により、『AQUOS 8K WORLD』を構築していく。さらには、スマートフォンや白物家電などで、カテゴリーやラインアップを拡大していく」とした。
続けて、「海外事業比率80%の達成を目指している当社にとって、欧州事業の拡大は非常に大きな意味を持つ。現地に出張している関係部門の方々は、ぜひこれまで以上に積極的な姿勢で、新たなビジネスの獲得に挑んでほしい」とした。

難易度の高い取り組みこそ、躊躇せず断行すべき
3つめの話題のタイトルを「強い決心」とした。戴会長兼社長は、「これまで2年間、経営基本方針に沿ってさまざまな構造改革を実行してきたが、関係者に与える影響が非常に大きいなど、難易度が高い施策については、実行のタイミングを慎重に見定めてきたものがいくつかある」と前置きし、矢板事業所のTVシステム事業関連メンバーの堺、幕張への集約、八尾事業所における冷蔵庫生産の終息はこれに当たるとした。
また、単身赴任手当の見直しも同様に慎重に検討を重ねてきた案件の1つであることを明かし、「今回、いよいよ実行に移すことにした。マネージャーについては、2016年10月から支給を凍結してきたが、2019年1月1日以降、特定の業務に従事する従業員を除き、全面的に手当を廃止する」とした。
その一方で「緩和策として、寮費の実質無償化や単身帰宅交通費の支給回数増加等を検討している」とし、「今回の手当の廃止は、経費削減だけが目的ではなく、構造改革実施時を除く平常時において、単身赴任を解消し、社員が家族と一緒に暮らせる環境を作ることも重要な目的であり、各部門とも、本部長の指揮のもと、こうした人員適正化の取り組みを加速してもらいたい」と述べた。

そして「私は、本来このような難易度の高い取り組みこそ、躊躇せず、『強い決心』を持って、速やかに断行すべきであったと考えている。なぜなら、課題から目を背け、先送りすれば、いずれは、さらに大きな課題や、事業そのものの継続を脅かす火種となって必ず返ってくるからである。もし、そのような事態に陥れば、結果的に社員を、もっと不幸にすることになる。各組織においても、いかなる困難に直面しても、決して逃げることなく、『強い決心』を持って立ち向かってほしい」と、自らの考えを述べた。
リーダーのさらなる奮起を期待している


テレビ東京系列で、「ガイアの夜明け」でシャープが取り上げられたことも紹介した。
「『独占!復活のシャープ』というタイトルで、当社の取り組みが1時間放映された。このタイトルからもわかる通り、私たちのこれまでの取り組みは、社外からも高く評価されている。また、番組内では、私の経営基本方針に沿って、ビジネスモデルの変革の観点から、ペット事業への参入や『ヘルシオデリ』のサービス開発について、コスト意識の向上の観点から、鴻海との協業による『ホットクック』のコストダウンについて、グローバル事業拡大の観点から、ASEANにおけるローカルフィット商品の取り組みが紹介され、さらに、信賞必罰の人事の具体事例についても紹介された」と内容について触れた。
さらに「私は、一部の社員と共に、堺匠寮誠意館の食堂でこの番組を見たが、番組で紹介されたリーダーの皆さんの発言から、私の経営基本方針が浸透している様子が、改めて垣間見えたことをうれしく思った。番組の冒頭でも触れられていた通り、私はシャープ復活のポイントは、リーダーの意識を変えることにあると考えている。アンケート調査の結果に関しては、意識改革を隅々まで浸透させることが今後の課題と話したが、そのためには、まずリーダー自らがより高い意識を持つことが重要である。リーダーのさらなる奮起を期待している」とした。

最後に戴会長兼社長は、「上期計画の達成に向け、最後まで全力で取り組んでほしい」とし、「8月25日以降、4日間に亘って、2018年度下期経営計画検討会を開催し、上期計画に齟齬が生じている事業の挽回策や、IoT HE事業本部などの新体制発足を踏まえた新たな取り組みと計画の積み上げなど、年間計画を必ず成し遂げるべく、さまざまな観点から議論を重ねてきた。依然として厳しい事業環境が続いているが、立てた計画は必ず有言実現する。これも、私の『強い決心』である。社員の皆さんも、こうした決心を持ち、計画達成に向け、全社一丸となって頑張っていこう」とした。

今回のメッセージは、戴会長兼社長の経営手法や物事の考え方を披露するとともに、社員に対して厳しい指摘をしながら、その手法を社員に理解してもらいたいという思いが垣間見られた。

(このニュースは2018年08月31日発行のclnet japanから引用したものです)

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